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2012.09.20 第15回 マンション全体へのスマートメーター導入
  東京海洋大学院教授 刑部(オサカベ)真弘先生
資料

マンション全体へのスマートメーター導入で
電気使用量の削減と住民の緩やかな連帯感の醸成

 過去数回超満員であった勉強会も、大きな会議室に変え少し余裕が出てきた。
 40名近くの参加者があり、テーマの面白さからか初参加の人も増え、今回は管理組合関係者が多いようだ。初参加と思われる人のみ簡単な自己紹介から始まった。

 講師としてお招きした東京海洋大学院教授刑部(オサカベ)真弘先生は、エネルギー問題の専門家で、原発問題、海洋資源、海洋エネルギー問題など幅広く研究されている。今回も本題であるスマート構想の前に海の話から始められた。

1.大気における二酸化炭素濃度

 蒸気機関の利用以降現在まで、原発の効果は若干あるものの、CO2濃度が急速に上昇している。CO2は大半が大気に放出されているが、吸収しているのは森林と海洋である。アマゾンで酸素を作り、サハラで太陽光発電、さらに海が炭酸塩に固化、大型海藻類が吸収している。昔の海が隆起した所を見るとCO2を吸収したもので山となっている、三越デパートの柱を見ると生物の殻(炭酸カルシウム)が堆積したもの、サンゴはCO2を出すが周りに植物が共生しそれ以上にCO2を吸収している。

2.海の資源

 日本の海の面積は世界6位。EUや中国等で魚消費が急拡大、2040年には魚類全滅? 技術では世界をリードしている自律型水中ロボット、魚を誘導してくる生物協調型ロボット、自動給餌システム等により、海洋牧場の可能性がある。

3.文明はエネルギー

 夜宇宙から地球を見ると先進国は明るい。石油、天然ガス。石炭、ウランのエネルギー資源はあとどれだけもつか。救世主はメタンハイドレード、シェールガス、炭層メタンである。
 日本の発電量の水力、火力、原子力、自然エネルギー別割合を紹介した後、火力をフル稼働させれば原子力をカバー? さらに地熱のポテンシャルの説明があった。

4.SMART構想
 (Small Advanced Regional Energy Technology)
 地域分散エネルギー技術のことで、次の3つから構成される。
(1)再生可能エネルギーの吸収
(2)市民力を活かすためのシステム
(3)防災・復災機能

5.再生可能エネルギーの吸収

 スペインは風力発電に注力、ドイツは原発打ち止め、太陽光固定価格買取制度も価格を順次下げている。
 従来は、供給制御のみで再生可能エネルギーの受け入れが困難だったが、ITを利用することにより供給及び需要を制御して双方向の電力融通を行い、再生可能エネルギーの受け入れを容易にしなければならない。
 夜間太陽光発電ができない時、家庭用蓄電装置(車)は強力な調整電源となる。また、家庭用発電装置、蓄熱装置も使う方でコントロールできる。即ち、家庭での発電・蓄熱や電気自動車の蓄電が大きく貢献することになる。電力に余裕がある時に家電製品を使用するスマート家電は有効である。
 病院や店舗等の大規模施設では、コジェネ(熱電併給)、ヒートポンプのように発電ばかりでなく、熱も利用することでエネルギーを効率良く使える。

6.市民力を活かすためのシステム

 ストックホルムでの交通規制(都心乗入れ制限)により、渋滞・CO2削減+市税増収が図られた事例、電力需要に応じた時間帯別電気料金において、もっと平坦でも人は節電意識が働くのではないかという市民力の強さの紹介があった。
 次に、スマートメーター(受電側にセンサーを取付け、需要者は誰でもネットを通じて刻々の電力使用状況を見ることができる)の説明後、八景島(50店舗程)における事例紹介があった。電力使用状況を見ていると、人の生活がわかるとの解説が面白い。センサーを個々の家に取付ければ安否確認にも使える。スマートメーターのマンションへの導入も、今後早い時期に行われるのではないか。

7.防災・復災機能
 電源喪失時ほとんどの病院が機能不全、非常用発電機の不動作は想定内と考えておくべき、停泊船舶の電気を陸へ供給する(60Hzでも問題ない)。イカ釣り船や大型客船など大容量発電機と燃料タンクを持っているので長期間供給が可能。震災時電源となることが期待される。スマートメーターを既に導入している海洋大学越中島キャンパスの事例が紹介された。
 最後に、スマートグリッドの説明と共に、見える化、町会単位の省エネが強調された。総合的に行われれば、エリア毎の計画停電もなしにすることができるかも知れない。

8.Q&A

1)Q:住民はあまり関心がない。共用部分だけでも可か?
  A:節電効果の意味から専有部分も含めた全体で、必要なのは住民の連帯意識だ。
2) Q:マンションは昼間人口が少ない、ピークカットの問題ではないか?
  A:夕方がピークで、全体を知ることによって協力意識も育つ。それが日本人だ。
3)Q:マンションでコジェネが成り立つか?
  A:難しいかも知れない。やはり大規模な病院とか大量の湯を使う所だろう。エコキュートの導入を考えたらどうか。

(記録担当:中西博)