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2012.05.17

東日本大震災・被災者『共助』の事例報告他

 
18:30〜佃区民館にて、宮川智子氏(クリップ生活研究所代表)による標記の講演があった。
 

 参加者同士がより知りあうということから、自己紹介から始めるのが勉強会の最近の恒例となった。

 管理組合の役員、管理会社の関係者、マンション管理士と多くはマンションに関係している人たちだが、ここで得た知識・知恵を持ち帰って皆に紹介したいという意向の強い人など、総勢20名が参加した。

 あるマンションでは、防犯から防災にギアチェンジし、公助・共助・自助と言われているが、近所(近助?)がより大切だと実感を述べられた。

 本日の講師、宮川智子氏(クリップ生活研究所代表)は、高齢社会や福祉介護社会を背景にライフスタイル研究に基づくマーケティングを企図し活躍している。社名の「クリップ」は、「Cretive Life Products」のCLIPであるとの言葉に、重みが感じられた。

 今回のテーマ「東日本大震災・被災者『共助』の事例報告」は、宮川氏が(財)日本防火協会より依頼を受け、婦人防火クラブ員の活動記録を作るため、2011年9月〜11月に岩手県(大槌町、釜石市、宮古市、陸前高田市)に入って調査したことの報告と整理によるもの。
 そのとき撮った津波による被災現場写真を投影しながら、生々しい印象を流暢な語りでお話しされた。

1.婦人防火クラブの位置づけ
 地域の消防団後方支援組織で、全国に約12,000組織、約178万人で構成され、日本防火協会に所属、無償のボランティア活動団体として地域に位置づけられている。普段の活動は災害時の炊き出し、使用道具などの洗濯、地域の消火器・警報機の見守り、地域の防災訓練など。

2.釜石市の奇跡 
 鵜住居小学校と釜石東中学校の児童・生徒約750名の避難事例の紹介と共に「釜石市津波防災カリキュラム」を示し、普段からの防災教育の重要性を強調された。
 避難3原則:@想定を信じるな、Aどんなときでも最善を尽くす、B率先避難者になる。

3.津波てんでんこ
 三陸地域の方言「てんでんこ」とは、「てんでんばらばらに・・・・」という意味で、津波が来たら親も子どもに構わずに、真っ先に自分だけでも早く高台に逃げろ!という昔からの伝承。 
 家族や他者を助けられなくても、それを非難しないのが不文律になっている。

4.婦人防火クラブ員の行動

(1)津波避難のときどうしたか
 高台避難、避難の声掛け、臨機応変な被災者支援、婦防ネットワークの機敏な対応…

(2)避難所での活動
 炊き出し、避難所運営コーディネート、物資配布、安否確認、情報連絡…

(3)避難所にいる人々、在宅避難者との交流
 トラブル回避、運営参加への誘い、自立避難生活へのサポート…

(4)地縁コミュニティ「結い」
 a.地域に伝わる共同体(互恵的利他コミュニティ)
 b.自然との関り方
 c.東北地方に残る力自(とじ)の気風

 ※「結い」は地方・地域にとって重要なインフラであるが、高齢化、過疎化、女性の社会進出、都市化が、現在「結い」の危機を招いている。
 災害は、それが起こる前にあった問題を顕在化させる。

 地域の防災力=地域のコミュニティの力 である。

5.共助について

(1)阪神淡路大震災は、市民ボランティア活動が中心であったが、東日本大震災では、それに加え、企業CSR活動が強力な支援となった。

(2)「ふんばろう東日本支援プロジェクト」
 仙台市出身で自らの親族も被災した早稲田大学大学院西條剛央専任講師により、ボランティアでの物資支援活動を開始したことから始まったプロジェクト。ネットを使って必要な物資の情報を収集し、全国に呼び掛け、必要とする人に直接送る(物資以外にサービス分野にも広げている)仕掛けで、日本最大級の支援組織となった。

(3)被災者「共助」の新たな仕組み
 災害発生後の災害救助・支援は遅れ、支援が行渡ることはない。法律、制度、行政、公共サービス等のすき間ができるのだ。災害時発生直後の救助・支援を担うのは地域の自発的な支援が不可欠。

    地域コミュニティ(結い=ボランティア)
             ↑
             協働
             ↓
 都市生活者・団体・企業(現代版結い=ボランティア) を提案したい。

6.【参考】参画意識の醸成のために
 授業参加の3段階の紹介
 日本教育大学大学院林義樹教授の提唱している授業参加の3段階とは、
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 第1段階|参 集|出席・視聴・記録|いあわせる・広まる
 第2段階|参 与|発信・交流・生産| かかわる・深まる
 第3段階|参 画|企画・実行・伝承|にないあう・高まる
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 で、それを引用し、参画するとは参集、参与の二つの前段階を含みながら、全体像づくりに加わりつつ、部分を担うことであると解説。
 参画技法は、問題点抽出、解決策立案、実践へ主体的に参画するためのプログラムとして、多分野で活用されていることを紹介された。

(記録担当:中西博)