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2012.04.12 プロから学ぶ「管理組合の書類整理法」
〜情報管理はリスク、整理することで見えてくるもの〜

 
18:30〜佃区民館にて、ファイリング・コンサルタント小野裕子先生をお招きして、書類整理法に関する勉強会を開催しました。
 

プロから学ぶ「管理組合の書類整理法」
〜情報管理はリスク、整理することで見えてくるもの〜

 どのような人が参加しているかを知っていた方が良いということで、前回のように、最初に出席者からの簡単な自己紹介から始まった。管理組合の役員、マンション管理士を始めとして、今回は管理会社の関係者が多いようだ。また、ある地域のコミュニティカレッジを主宰している人たちが最近は常連となっている。

 講師の小野裕子先生は、「イトーキ」に入社され、ファイリング研究室で16年間研究生活を送り、退職後、ファイリング・コンサルタントとして7年目、企業でも個人でも何処へでも出かけてコンサルティングを業としておられるとのことである。

 都心の一等地にあるマンション(特に賃貸率高く、外国人が多い)で、当初管理組合は機能していなかったが、修繕のため突然臨時総会の招集がかかり、火中の栗を拾う性格から、4〜5年理事長を務めるはめになった。次から次へと問題が発生、その処理に苦労したが、その時の経験が仕事に役立ち、2002年管理会社から声がかかり、フロントマンの書類の保管にタッチするようになった。

 今日は、「ファイリング・システムの基本」、「管理組合の書類整理について」の2つをメインテーマに、内容の濃いお話しをされた。

1.ファイリング・システムの基本編
(1)ファイリング・システムの必要性
 企業はこんな時にファイリングを強化・導入するということで、4社ほどの導入事例を紹介し、その目的や定量的効果を説明された。目に見える形として、書類の廃棄による省スペース(40〜65%減)が挙げられている。
 また、出席者に、17項目にわたり「はい」「いいえ」のアンケートが行われ、いかに整理されていないかを認識させ、文書管理上の問題点を指摘された。

(2)ファイリング・システム導入効果
(a)文書量の削減、(b)文書の共通化、(c)統一的な検索システムの導入と確立、(d)IT化促進の基盤づくり等を挙げられ、一時的な効果だけでなく、二次的、三次的効果、結果として業務が効率化されるばかりでなく、問題点の解決と共に、執務環境が良くなると締めくくられた。

(3)ファイリング・システムとは・・・「文書整理制度」のこと
(a)定義
 組織体の維持発展のために必要な文書を、その組織体のものとして、必要に応じ即座に利用し得るように、組織的に整理保管し、ついには廃棄するに至る一連の制度のこと。
(b)ファイリングの3つの柱(基本方針)
『捨』、『共』、『流』(捨てる、共有する、流れを持たせる)と白板に大きく書かれ、しっかりと説明された。
1)不要文書の廃棄:こんな文書は捨てられる!
2)文書の共有化:文書の私物化をやめ、集中保管する。
3)文書に流れを持たせる:保管(事務室)→保存(書庫)→廃棄 という流れで文書をシステム化し、オフィスに滞留させない。特に、年度替わりでのウツシカエ、書庫へのオキカエを強調された。
 また、管理会社の「フロントチームファイル基準表」を事例として紹介された。

(4)ファイリング・システムのしくみ
 何を使ってどのように整理するのか。
(a)フォルダーファイリング
 バインダーと比較しながら、実物のフォルダーを用いて、「見出しガイドによる1/6カットシステム等、その使い方を詳細に説明された。
(b)分類と配列
 各部門での実情と特性に合った分類、すなわち、各保管単位ごとに業務の内容や関連性・流れ・優先順位などを考慮して、分類・配列する。
(c)収納キャビネットとその使い方
 キャビネット[引出し式(縦型、横型)、棚式]のそれぞれの特長と使い方を写真で紹介、主流は「横型引出し」ではないかとのことである。
(d)保存体制の確立
 書庫に保存するにあたって、「文書保存箱カード」の記載例や管理会社の「管理組合管理業務関係文書の保存年限」事例を紹介された。提示された「管理組合の保存年限検討資料」は、目からうろこである。


2.管理組合の書類整理について
(1)管理組合の書類整理の必要性
 管理組合が書類整理上困っている点として、良く分析された結果で、当事者にとっては、耳の痛いことをずばり指摘された。

(2)目指すべき方向性
(a)必要時、必要な文書を迅速に取り出せる効率的なしくみ。
(b)マンション価値に直結する情報資産、紛失・散逸なきよう適切な管理。
(c)文書・記録類は増えるので、事務室→書庫→廃棄の流れを作る。
(d)人が代わっても継続されるようなしくみを作る。
(e)管理会社に頼らない自立した文書・記録の管理を行う。

(3)基本的な方針
 対象とする場所・文書、採用するしくみ、使用ファイル用品、分類・配列、保存年限等について、基本方針を立てる。

(4)進め方
 7回(3時間/回)の会合(間隔は2週間程度)を持ちながら進めるのが、標準的コースである。主たるワークは管理組合で、その時にコンサルティングを行う。

(5)某管理組合のファイリング・システム導入事例の紹介
 現在進行中とのことであるが、築25年、47戸のマンションで、当該理事長も出席され、導入前、導入後の写真を提示しながら、詳しく紹介され、見える形でその効果が判った。


3.Q&A
(1)
Q:フォルダーの中の書類の入れ方は?
A:ホッチキス、ゼムクリップ、クリアファイル等を使ってまとめる。

(2)
Q:管理会社にパッケージを作ってくれとお願いしたら作ってくれる?
A:どういう体制でやるのかを決めて頂き、声をかけてくれれば行く。

(3)
Q:管理員にはどんな指導をしているのか?(出席者)
A:マニュアルを作って指導しているが、フロントマンの資質によるところが大きいかも知れない。また、個人情報も含まれているのでキチンとしなければならないと思っている(出席管理会社)。

(4)
Q:管理員はファイリングの研修を受けているのか(同上)?
A:特に行ってはいないと思う。実務で学んでいく(同上)。

(5)
Q:電子化したものでの保管で注意事項は?
A:基本的には紙ベースと同じだが、検索しやすいタイトルのつけ方、保存期限、セキュリティ(アクセス)等のルールが必要だろう。特に、紙か電子化のどちらを原本とするかも注意点だ。

(6)
Q:文書管理細則の必要性は?
A:文書の整理ができたら細則を作ると良い。

(7)
Q:コンサルティングを依頼した時の費用は?
A:原則21,000円/時間だが、結局は相談事である。

(記録担当:中西博)